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月別アーカイブ: 2025年10月

第15回ダクト工事雑学講座~必機器選定のリアル—ファン・全熱交換器・ダンパ・サイレンサ・センサー~

皆さんこんにちは!

株式会社湊工業、更新担当の中西です。

 

換気設備は“機器の寄せ集め”ではなく“チーム”。各ポジションの適材適所を見極めないと、風量が出ない・うるさい・結露する・メンテしづらいと四重苦になります。今回は主要機器の選定ポイントを現場目線でまとめます。

 

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1. ファン(送排風機)—心臓部は静圧と効率で選ぶ
• 風量-静圧特性:ダクト損失(Pa)を読み、運転点が効率の山に乗る型式・回転数を選ぶ。
• 型式:前向き羽根(低静圧・低騒音)、後ろ向き羽根(中〜高静圧・高効率)、SIROCCO/ターボ、軸流(大量風量・低静圧)。
• モータ:EC/DCは部分負荷効率が高く、デマンド制御と相性良し。インバータ駆動の誘導機も依然主力。
• 保守:ベルト駆動はテンション管理・プーリ摩耗、直結はベアリング交換周期。点検スペースの“逃げ”確保は必須。
実務メモ:仕様書に期待運転点(風量・静圧・効率・回転数)と騒音基準を明記。ファン選定は“曲線を合わせる作業”です。

 

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2. 全熱交換器(熱交換換気)—快適と省エネの要
• 方式:回転式(ロータリー)は効率が高く圧損低め、固定式(対向流プレート)は漏れが少なくメンテが容易。
• 効率:顕熱・全熱(湿気)の回収率を確認。冬の乾燥・夏の蒸し暑さを和らげる。
• 霜取り:寒冷地は冬期のバイパス運転やプレヒートを想定。ドレンの処理を忘れず。
• 衛生:交換素子の清掃アクセス、フィルタ前置き、カビ対策。

 

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3. ダンパ—空気の交通整理係
• 手動/自動:バランス取り(蝶形)、防火・防煙、VAV(可変風量)用のアクチュエータ付など。
• 設置位置:エルボ直後は避け、直管部を確保。センサーとセットで制御の再現性を確保。
• 気密:閉止漏れ(Lクラス)と作動トルクをカタログで確認。

 

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4. サイレンサ—“長さ”をケチると効かない
• 形式:ストレート、スプリット、片吸い。周波数特性を見ながら選ぶ。
• 圧損:静圧を食うので、前後のファン点を見直し。短く太くが基本。
• 防火:区画貫通部は耐火・不燃材を選ぶ。

 

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5. フィルタ—空気のふるい
• 性能:JISやMERV相当の捕集効率、初期・最終圧損、交換周期。
• 差圧計:差圧が“交換の合図”。見える化でメンテ抜けを防止。⏱️
• プレフィルタ+中高性能の二段で、寿命と衛生を両立。

 

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6. センサー&制御—無駄なく賢く回す頭脳
• CO₂/VOC/PM2.5:在室反応で外気量やVAVを制御。感染症対策としても有効。
• 温湿度:デシカントや加湿器制御と連携。
• BAS:スケジュール運転、清掃・交換アラーム、遠隔監視。ログは“改善の教科書”。

 

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7. 納まり—図面の外に本当の難所がある
• 点検スペース:パネルが開く半径、フィルタが引き抜ける奥行、脚立の設置余地。
• 搬入経路:エレベーターサイズ、階段の折れ、屋上クレーンの可否。
• 雨仕舞:屋外設置は防水立上り、ケーブルグランド、塩害対策。

 

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8. 見積・比較の読み方
• 含まれるもの/含まれないもの(電源工事、コア抜き、足場、試運転調整)。
• 性能保証(風量、静圧、効率、騒音、漏風率)。
• 運用コスト(フィルタ寿命、電力、清掃人件費)。

 

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9. 失敗事例と対策(ケーススタディ)
• ケースA:静圧が足りない
ロータリーフィルタの最終圧損が想定より大きく、風量が設計比70%。→ ファンの余力が無い。ファンリミット+モータ容量に余白を持たせ、差圧アラームで早期清掃。
• ケースB:うるさくてクレーム
末端で風速が8m/s、吹出口直下のデスクでドラフト感。→ 吹出口サイズをアップ、末端ダンパで調整、サイレンサ追加。“静かさ”は寸法から。
• ケースC:結露で天井汚れ
屋外に近いダクト区間で保温不足、ドレンも未整備。→ 断熱厚アップ、ドレン勾配1/100、トラップの封水確保。

 

10. 仕様書に書くと喜ばれること
• 期待運転点(風量・静圧・効率・騒音)と測定方法
• 点検・清掃の推奨周期(フィルタ、ベルト、グリス)
• 消耗品の型番と手配先、代替可能品の条件
• 試運転時の記録シート(CO₂、差圧、温湿度、電流値)。

 

11. スペア&ライフサイクル
• 予備フィルタを1年分、ベルトは最低1セット常備。
• 更新性:10〜15年先のリプレースを想定したスペース・電源・基礎。
• 遠隔監視:異常検知・省エネ分析・故障予兆。

 

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12. 吹出口・吸込口—体感を決める“顔”
• 天井吹出:コアンダ効果で遠達性。事務室で定番。
• 側壁吹出:意匠に合わせやすいが、ドラフトに注意。
• 床吹出:大空間・可変用途に強い。配線床と相性良し。
• 吸込グリル:清掃アクセスの良いものを選定。フィルタ内蔵型は点検サイクルを短めに。

 

13. 屋外フード・防虫・防雪・防雨
• フード形状:フードは見た目以上に性能差がある。逆風時の逆流、雨の侵入、雪の吸い込みを検証。
• 防虫網:細かすぎるメッシュは目詰まりで風量低下。清掃可能な構造と差圧監視を。
• 塩害:海沿いはSUSやコーティング、ケーブル端末の防水。

 

14. 耐風速・停電時のふるまい
• 台風時の逆回転・逆流対策(逆止弁、ダンパ閉止)
• 停電→復電でのソフトスタート、BAS側の初期化手順。
• 非常時運転(防煙・排煙)系と誤連動しないインタロック。

 

15. メンテナンス性のUX
• フィルタ差圧の見える化:現場に貼る“交換早見表”。
• 清掃時の落下粉じん対策:ブルーシート・養生テープ・集じん機。
• 工具レスで開閉できる留め具は時短の味方。⏱️

 

16. 価格だけでなく“リスク”で比較
同じスペックでも、納まり難易度・保守コスト・騒音余裕度・メーカーサポートで実質価値は変わる。見積比較では“安い順”ではなく“後悔しない順”で並べ替えよう。

 

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結語
機器は単品で語らず、系統で最適化する。その視点さえ持てば、換気設備はもっと静かに、賢く、長く働きます。次回はお待ちかね、ダクト工事現場のディテールに突入します!

 

 

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