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日別アーカイブ: 2025年10月20日

第15回ダクト工事雑学講座~ダクト工事の現場ディテール—板金・フランジ・吊り・気密試験まで徹底解説~

皆さんこんにちは!

株式会社湊工業、更新担当の中西です。

 

「図面はきれい、でも天井裏はもっとドラマがある。」——ダクト工事の難しさは、限られた空間に“気持ちよく流れる道”を作ることにあります。今回は板金の基本からフランジの選択、吊り・支持金物の据え方、気密・防火・断熱、そして試験・記録まで、現場で役立つディテールを失敗談込みでまとめます。

 

1. 板金・ダクト製作の基礎
• 材質:ガルバ(亜鉛メッキ鋼板)が汎用。塩害・薬品環境はSUS、臭気・油煙は板厚増しや耐油シールを検討。
• 形状:角ダクト(矩形)は納まり自由度が高い。スパイラル(円形)は圧損・漏風・剛性に優れ、軽量で施工が速いのが強み。
• エルボR:90°エルボはR=ダクト幅の1.5倍以上を目安。ショートエルボは損失大→サイレンサ追加や“手前の直管長”で乱流緩和を。↩️
• エキスパンション:温度差・長尺ダクトは伸縮を吸収するキャンバスやスリットで応力逃がし。天井割付けで“揺れ代”も計画。

 

2. フランジ・継手の作法(気密とスピードのバランス)
• 共板フランジ(TDC/TDF):軽量・早いが気密はシール材頼み。屋外・負圧大なら気密等級に注意。
• アングルフランジ:強度・気密良し、ただし重量増&作業手数。大型ダクトや屋外立上りに向く。
• バーリング+スライドダクト:小径・枝で有効。組立スピードが出る。
• ガスケット:ネオプレン/EPDMで連続貼り。ジョイントの“切れ目”をボルト位置に置かないのが小ワザ。
現場メモ:ボルトは対角締めで面圧均一。増し締めのタイミングを断熱前に一度設けると漏風が激減。

 

3. 吊り・支持金物(落ちない・揺れない・鳴かない)
• 吊りボルト:M8〜M12が主流。インサート位置の墨出しを最優先に。梁筋を避ける—あとからズラすのは地獄。
• 揺れ止め:長尺・高速気流はブレース必須。45°でテンションを持たせ、共振帯域を逃がす。
• キャンバス接続:ファン近傍は振動アイソレーションを。キャンバスの捻れ・撓みは音源になるので直線で。
• レベル出し:レーザーで通りを合わせ、エルボ手前後に直管を確保(理想は水力径の3〜5倍)。流れが整う=静かで風量が出る。

 

4. シール・気密—漏れは“静圧と電気代”の敵
• シール材:ブチルテープ+アルミテープの二重が鉄板。シーラントは塗り厚一定、端部は折り返し。
• 気密等級:漏えい率(%)で評価。外気導入・負圧系は一段上の等級を狙う。差圧が高いと臭気逆流が顕在化しやすい。
• テスト:スモークテストで局所の漏れを可視化。差圧計でフランジ跨ぎの圧損増を確認。

 

5. 区画貫通・防火(“穴を通す”は法規の山場)
• スリーブ:躯体貫通はスリーブ必須。鋼製+モルタル充填、耐火シーリングで隙間0を目標。
• 防火ダンパ(FD)/防煙ダンパ(SD):図面と実機の型式一致をダブルチェック。温度ヒューズの位置・向き、点検口の確保が命。
• ケーブル・配管との離隔:電気・給排水との干渉は施工図段階で解決。現場で“下げる”のは最終手段。

 

6. 断熱・防露(露点を跨がせない)
• 材質:グラスウール、ゴム系、ポリエチレンなど。結露区間は厚め、屋外はアルミ被覆で耐候。
• ジョイント:目地のズレは結露の温床。バンド+テープで気密を担保。
• ドレン:全熱交換器・サイレンサで結露が出る場合は勾配1/100、封水トラップを忘れず。

 

7. 騒音対策(“寸法”が最強のサイレンサ)
• 末端風速を落とす→ドラフト・吹鳴り軽減。
• 直管長の確保→乱流抑制で音源低減。
• サイレンサは長さ>数。短いのを2本より必要長の1本の方が効く。

 

8. 試験・調整・記録(Cx)
1) 系統ごとにダンパ全開→総風量を確認
2) 末端で目標風量±10%にバランス
3) CO₂負荷試験(仮設で人員/発生器)→応答性とVAV挙動を記録
4) 騒音・振動、差圧、温湿度、電流値を写真+数値で残す
5) フィルタ差圧の初期値を引き渡し書に明記
記録は時系列で見返せるよう、フォルダ規約とファイル命名を統一。

 

9. 工程と段取り(干渉は図面で終わらせる)
• BIM/3Dで梁下・配管・ケーブルラックと高さ関係を確定。
• 先行墨出しで“吊りピッチ”を実寸化。
• ユニット化(工場でプリフレーム)で現場工数と火気リスクを削減。

 

10. 失敗事例から学ぶ
• ケース1:FDに点検口がない→ 検査で開かず詰み。ダンパ前後300mmの点検域をルール化。
• ケース2:キャンバスがねじれ→ 低周波が“ボーボー”。接続方向のマークを製作段階で。
• ケース3:断熱目地が縦横ズレ→ 天井面に水玉模様。職長が最初の1スパンを現示して見本化。
• ケース4:貫通後の隙間→ 臭気移行&防火不適合。完了前の自主管理票に“貫通写真”項目を追加。

 

11. 安全衛生(切らない・落とさない・吸わせない)
• 切創:エッジ養生・防刃手袋・袖口。
• 落下:工具落下防止、脚立の開き止め。
• 粉じん:コア抜きは集じん機併用、作業後の空調復帰タイミング厳守。

 

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まとめ
“まっすぐ・揺れない・漏れない・鳴らない”。この4拍子が揃うと、ダクトは存在を感じさせない名脇役になります。次回は“住宅の24時間換気・運用のコツ”へ。住まいならではの静音・省エネ・メンテの知恵を深掘りします。✨

 

 

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